GWに行ってきたアメリカ西海岸の旅。
初めて訪れたアメリカという国(ハワイは除いて...)で感じたことをまとめてみたいと思う。

California Hoppy Tour '09
http://www.shimbashi-dry-dock.com/archives/cat_10038820.html

自宅でのビール(酒)造りが合法なアメリカ(*日本では違法)では、ホームブルワー達が実に様々なハンドクラフトビールを造り、新たなスタイルがどんどん生まれ続けている。
その延長にマイクロブルワリーという存在があり(あるように思う)、ホームブルワーはアイデアを持ち込んだり、逆に家庭で造られたビールのコンテストをブルワリー側が開催してサポートしてみたりと、気軽に独自のビール文化を楽しんでいる。

日本においても、もはや定着しつつある「I.P.A.(India Pale Ale:インディア ペールエール)」のラガー版、「I.P.L.(India Pale Lager)」や「Black Pilsner」という言葉をサンディエゴで聞いた。なんて自由な発想なんだろうか・・・

IPAといえば、18世紀、かつてイギリスから植民地だったインドにペールエールを運ぶ際、赤道を通過するという灼熱の環境だったため、ビールが劣化してしまった・・・という事実が関係する。このような過酷な条件で劣化しない強いビールを造ろうとしたイギリス人が、防腐効果のあるホップを多量に添加し(苦味をつけ)、アルコール分を高めにして醸造を行ったというのが起源だ。
そして、最近になり、アメリカのクラフトブルワリー界でIPAはリバイバル的にヒットすることになる。とはいってもそこはアメリカのテイストが大きく加わった別モノ。。。興味のある方はドライドックにもたくさん並んでいるのでぜひお試しを。
いまやホップを効かせたビールは流行以上の存在になっている。カスケード種に代表されるグレープフルーツのようなシトラス香をもつアメリカ産ホップはフルーティでとても心地よく爽快。ホップのもうひとつの役目である苦味も強烈だが、モルトの甘味を伴ったとき、この甘苦バランスがクセになる。

このような新たなスタイルを作ったのは、やはりお国柄によるものだと感じた。
様々な人種やルーツが入り混じった複雑な文化といえる「アメリカ」で、イギリス系、ドイツ系移民といったビールになじみの深い人たちが基礎をつくり、その後さらに流入してくる色々な文化の融合。。。そうした環境が新たな定番を作り、過去や伝統にとらわれない自由な志向となったのではないだろうか。
それがアメリカの文化であり、ビールにおいてもまたしかりのようだ。
ヨーロッパがそれぞれの地域に根付いた伝統を重んじて、昔から今まで同じビールを造り続けるのであれば、斬新なアイディアとチャレンジで、新たなビールの世界観を創りあげているのがアメリカなのである。
インドの向けのペールエールが歴史的な流れからIPAと呼ばれるのに、ホッピィでアルコール高めなラガーをIPLとしてしまったり、黄金色だからこそのピルスナーを勝手に黒色にしてしまったり。。。こんな議論は彼らにとってどうでもよいのだろう。
こうして新たな価値観を生んでいくのだ。無論、どちらが良い悪いの観点ではない。ウマイかどうかなのだ。

(一方のヨーロッパ。。。というか日本を含め世界的な傾向としてビールが飲まれなくなっているのは憂うべきこと。)

1970年代から今日に至るまで、バドワイザー、クアーズ、ミラーのような、いわゆる"水のような"ライトラガーがたくさん飲まれている中、このような非常に興味深い(ある意味マニアックな)クラフトビールの世界が日本と一桁違うシェアで存在する。