PC186388
新橋のビール屋といえば、まだまだSDDでもCAでもなくビアライゼ '98。
新橋5丁目で十年。移転した2丁目で三年目を迎える伝統あるビール屋だ。

八重洲にあった名店「灘コロンビア」のマスター・新井徳司さんの唯一のお弟子さんだった
松尾光平さんが1998年に開業された。
氏が高校一年生の時から、17年働いたという灘コロンビアが閉店となり、
譲り受けた旧式のディスペンサーは今でもバリバリの現役。
レーン(パイプ)の直径9mmというのはドライドックの1.5倍の太さにあたる。
出てくるビールの流量を見てみると、水道の蛇口をおもいっきりひねったときのようだ。

注いだビールの泡にマッチ棒が立つというパフォーマンスが有名だ。
しっかりと炭酸ガスを抜き、モチッとした綺麗な泡をつくり出すことで可能になるのだが、
これは熟練のワザに加え、ビールの種類によるところも大きい。
あまり話題には出ないが、ビアライゼ '98のビールは「アサヒ樽詰 生」(通称:マルエフ)
と呼ばれ、アサヒ吹田工場でのみ製造。もちろん商品カタログにもウェブサイトにも載っていない。
スーパードライが出る前のアサヒのメインビールだったようだ。
(正確には現在のレシピは「ほろにが」?)

泡をつくり出すのは、ホップ由来の苦味成分とタンパク質であるため、スッキリした味わいの
「スーパードライ」より、コクも苦みも多い「マルエフ」の泡はしっかりする。
加えて、ディスペンサーがすごい勢いでビールを送り出すため、グラスにぶつかったときに
よりきめ細かな泡が生まれるのだ。

・・・・・・・・・・・

オープン以来、この十数年、未だ自分以外の人にビールを注がせることはない。
それが松尾さんのスタイルだ。

カウンターの中で直接、ご指導いただいたことはないが、いつも色々なことを
教えていただき、お電話やハガキなどをくださる。
年賀状に「今年も美味しいビールを注いでいこう!」とメッセージをくださった時は感動した。

ビアライゼ移転時のイベントで「注いでみなよ!」と言っていただいたこともあったが、
超恐縮すぎて丁重にお断りさせていただいたのは二年ほど前の話し。
そういうことは積極的にやる方だと自分でも思うが、さすがに遠慮した。
そのとき、そのカウンター内で松尾さんと並んでいたのは、
もう一人のビール注ぎ名人「銀座ライオン」の海老原さんだったのだから。。。
まだそこに立つには明らかに早かった。

なかなか出向けないビアライゼに年末のご挨拶に行くのが毎年の恒例になっている。
ドライドックのスーパードライとはやや違うベクトルのアサヒビールを堪能しつつ、
一年を振り返る、そんな12月の第三土曜日だった。